「何か新しい商材が必要だ」。清水社長は思案の日々を送っていた。そんなある時、東京のトロフィーや楯を扱う企業から「グラスと九谷焼を組み合わせた楯を作ってほしい」という依頼が舞い込んだ。そんなに難しいとも考えずに、ボンドで張り合わせた楯を作り、納品した。ところが、3か月後に「とれたぞ。どうしてくれるんだ」というクレームが寄せられた。その時初めて磁器と異素材を接合させることは難しいのだということに気づいた。工業用のボンドではだめだ。では何でくっつけたらいいのか。清水社長は石川県工業試験場に相談に行ったり、大学の研究室の先生に教えを乞うたりと研究を重ねた。新たな接合手法を考案し、これならというものに仕上げるのに3年の月日がかかった。
ちょうどそのころ、「飲物の色が見える九谷焼ができないか」という提案が寄せられていた。台座に色鮮やかな九谷焼を配し、グラス部分は江戸硝子という全く新しい商品「九谷和グラス」が誕生した。しかし、最初は全く売れなかった。展示会に出品するとバイヤーから苦い顔で見られた。当時他の産地でも陶磁器と金属やガラスを組み合わせた商品が販売されていたが、必ずといって接合部がとれてしまうクレームが発生していた。バイヤーにとって、異素材を組み合わせた商品はこりごりだという悪いイメージが定着していた。清水社長は「うちの商品は大丈夫です」と言っても取り合ってもらえない。転機となったのが、グッドデザイン賞の受賞だった。2006年の「グッドデザイン賞新領域デザイン部門」を受賞し、世の中に九谷和グラスが知られるようになると、見た目の美しさとともに、接合部がとれにくいという技術面での優位性も理解されるようになった。今では、ワインにも日本酒にもマッチするグラスとして、同社の主力商品となっている。