SDGsの主な特徴を教えてください。
「ミレニアム開発目標(MDGs)の後継として採択された国連全加盟国の目標です。ミレニアム開発目標が途上国を対象としていたことに対し、SDGsは先進国を含めたすべての加盟国が対象です。『地球上の誰一人として取り残さない』と誓うことで包摂性も強調しています」
中小企業がSDGsに取り組むメリットには、どのようなものがありますか?
「SDGsのうち高齢化や環境に関する社会課題は、中小企業が成長するビジネスチャンスになりえます。加速する高齢化に起因する諸問題は増大するでしょう。これを解決できるサービスや商品を開発できる企業は成長するはずです。環境問題に対する意識もSDGsによって高まってきています。企業は社会課題を解決すべきという段階から、社会課題をむしろマーケティングに活用するといった段階に進むことが予想されます」
「社会課題は行政か民間あるいはNPO法人のような団体のいずれかが解決するものだと思いますが、民間の役割が重要であるという認識を中小企業の経営者と従業員で共有できれば、新たな市場が拓けるでしょう」
SDGsに取り組む中小企業の課題は?
「まだ理解が進んでいないということでしょうか。中小企業は、これまで営業目標や生産ノルマの達成といった目先のことに意識が行きがちでした。行政、民間、NPOという多様な参加者が地域貢献や地方創生といった共通の価値を見出し、2030年までという長期間で社会課題を解決するというSDGsの概念を持つこと自体が難しいようです」
打開策は?
「SDGsにチャレンジするに値する高い意識を持った従業員を採用することです。今の若者には高い社交能力があります。街や社会を良くするための諸策立案で彼らや行政と共通認識を持ち、新たなビジネスを創造できる組織は強くなります。これに尽力できる従業員を育成する環境整備も必要です」
「行政だけでなく社会人や主婦、学生という地域住民ともビジョンを語り合わなければなりませんから、ネットワークを構築する感性や行動力、コミュニケーションスキルも問われるでしょう。難しそうに聞こえますが、社会課題を解決するという個人や有志の思いの事業化は、上場しているような大企業より小回りの利く中小企業の方が実現しやすいと考えています」
ご自身の活動の中から中小企業の参考になる事例を紹介してください。
「私がアドバイザーを務める日経ソーシャルビジネスコンテストは昨年度、SDGsをテーマに実施しました。大賞はITやAI(人工知能)を駆使してバングラデシュで医療を行う東京大学発の医療ベンチャー企業が受賞しました」
「飲食店で売れ残った食品のマッチングプラットフォームをアプリで展開して、フードロスの削減に貢献する企業も注目を浴びました。若い世代は、ITを活用して社会貢献ビジネスを立ち上げることに意欲的です。中小企業は、SDGsに取り組むことで優秀な人材を採用するチャンスが広がるでしょう」
これからSDGsに取り組む中小企業が意識すべき点は?
「上場企業は、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮していることを重視するESG投資の関連情報を開示する方向にあります。ESG投資家が投資対象に選ぶ企業は、取引先にも同じレベルの取り組みを期待しますので、ESGの意識を持たない企業は上場企業の取引先に選ばれにくくなっていきます。中小企業は、ESGの側面からもSDGs に取り組むべきでしょう」
中小企業は、SDGs達成への貢献をどのように稼ぐ力に変えるべきでしょうか?
「SDGsを理解して、新たなビジネスチャンスを創出する力を強化することが稼ぐ力になると思っています。行政やNPOと一緒に地方創生事業を立ち上げる機会も増えるでしょう。これをビジネスにするためには、社会課題を的確に捉えたうえで、自社の経営資源を活用して解決できる案件の企画化が必要です。地域を巻き込んで長期間運用できるビジネスモデルを考察する力も求められます」
SDGsへの取り組みを検討している中小企業にメッセージをお願いします。
「SDGsは好機であり、良きツール。社会課題を解決するための感度を上げ、自社目標の再確認や社員研修などに活用して事業拡大につなげてください」