一方、よろず支援拠点との協力関係を構築したことによって、町の事業者に対して、これまで以上に踏み込んだ経営支援にも取り組めるようになった。
斜里町の温泉宿泊施設の事業承継では、2024年から小野寺氏と中野氏が連携してサポート。新たな経営者に対しても伴走型の支援を実施している。
この宿泊温泉施設は、公衆浴場として昭和の時代から町民たちに利用されてきた。しかし、旧経営者が高齢となり、親族に後継者がいなかったことから、第三者による事業承継を模索していた。承継後も従来通り事業を継続することを条件としていたが、興味を示す事業者は「社員寮にしたい」「宿泊事業だけ続ける」といったものばかりで、旧経営者の条件に見合う承継先をみつけることができなかった。そこで、旧経営者は民間のマッチングサイトに登録。すると、条件に合う承継先が現れた。
マッチングの相手は東京に住んでいた元地方公務員。退職後、斜里町への移住を考えていたところ、サイトで温泉施設の事業譲渡の情報を見つけ、旧経営者に事業承継を申し出た。
旧経営者は商工会の会員で、マッチングが決まった話は小野寺氏のもとにも届いた。小野寺氏は「支援の必要性を強く感じた」と語った。小野寺氏が旧経営者に申し出て、支援が動き出した。
承継先の自己資金にも限りがあり、資金調達が課題だった。施設が老朽化していることもあり、金融機関は厳しい見方だったそうだ。借り入れができたとしても返済しなければならない。小野寺氏は中野氏に相談。連携して支援にあたることになった。
「こうした交渉事にはそれぞれの思いがある。金融機関は金融機関、事業者はいくらで譲渡し、継ぐ側はいくらで引き受けるか。そして、その後に事業を続けられるか。思い入れだけではまとまらないので、具体的な話をしていった」と中野氏。東京に住む承継先とはリモートでつなぎ、今後の対応を練った。
「複数の事業計画を作成し、資金調達を含め、事業承継に向けた今後のプランやスケジュールを作っていった。『こういう出方だと、こういうことをしよう』というアクションプランも考えた」と小野寺氏。半年ほどかけてそのプランを実践した。すると、金融機関から融資の申し出があり、大きな課題だった資金調達の問題をクリアすることができ、事業譲渡が実現した。