同社の創業者、九十九芳信(よしのぶ)氏は高松で徳島産の材木の商いをしていたが、小豆島で「真土」(まね)に出会う。粘土と土、砂がうまくブレンドされた鋳型(いがた)に適した土だった。鋳造関連製品の研究・開発に携わる"ヨシノブのツチ"こと「ツチヨシ」の商売は1933年、この土の採掘と販売から始まった。
スタートは良かった。高度経済成長にともない、あちこちで鋳物をはじめ建築など砂の需要が高まり社業も好調だった。だが、やがて円高などを背景に車などの工場が海外へ移転し、部品を生産する鋳物工場も海外に出て行ってしまう。車や飛行機の軽量化が求められるようになり、部品自体も鉄の鋳物から樹脂や炭素繊維に置き換わることが多くなった。ピーク時に年間約500万トンあった鋳物の生産量はいま、約350万トンである。
ただ、多くの産業から生まれる金属スクラップやダライ粉などを材料として利用する鋳造業界では自ずとリサイクルが実施されていた。さらに1980年代からの環境意識の高まりで、鋳型に使用した砂を再生利用しようという動きも広がった。九十九社長は「今や99%がリサイクル。熱や圧力で細かくなったものは集塵機で処理しているが、それ以外の粗い砂は再利用するのが業界の常識。うちも積極的に取り組んでいます」と話す。
好例が浄水場のろ過砂だろう。山に降った雨は川となり流れ出るが、この水には重金属、砒素、鉄、マンガンなど多様な物質が微量含まれている。上流に工場などがあればなおさらだ。こうした不純物を取り除くため、浄水場では無煙炭や活性炭を重ね、一番上に粒子の細かいろ過砂を敷いて、上から水を通して二重、三重にろ過している。
同社は近隣の浄水場に水質改善用のろ過砂を年に約3000トン供給しているが、ろ過するうちに汚れる砂を定期的に新しい砂に取り替えている。使用済みの砂は再度ろ過砂に加工、あるいは園芸用、テニスコート、サッカーグラウンドや野球場の乾燥砂などにリサイクルする。九十九社長は「昔は使ったら全部捨てていたが、リサイクルすればコストが抑えられ、産業廃棄物も出ない」と胸を張る。
将来は「水道から飲み水が出るという日本では当たり前のことを海外にも広げ、園芸やスポーツに関わる環境を整えることで多くの人に有意義な時間を提供し、健康意識を高めて行きたい」という。日本のような水環境をすぐに整えることは困難かもしれないが、少しずつ綺麗な水を循環させることで、より安全な世界に近づくと考えているからだ。「安全な水とトイレを世界中に」はSDGsの17のゴールのひとつでもある。いずれは飲み水の安全確保に向けたコンサルタント、コンシェルジュとなって、CSR(企業の社会的責任)を果たすグローカル企業になるのが目標だ。