ロールケーキとは、薄いスポンジケーキにクリームやジャムを渦巻き状に巻いた洋菓子で、日本では昭和30年代に大手製パン企業が「スイスロール」を発売すると、ロールケーキは一般家庭のおやつとして世間に認識されていった。
そのロールケーキでミルキーブランドを展開していく。そのためにはミルキークリームロールのコンセプトは、誰もが幼少期に口にしたミルキーのイメージを彷彿させるものでなくてはならない。そうでなければミルキーブランドをストレートに訴求できない。ならば新商品は、純白のソフトキャンディー、ミルキーを象徴する「白」にこだわろう。スポンジ生地、クリームとロールケーキを構成する素材をすべて白色で統一しよう。それによってミルキーのイメージを力強く押し出していこう。具体的な商品コンセプトが決まった。
ところが、それは一筋縄でいくことではなかった。「白色で統一」と言葉では簡単にいえるが、実際につくるとなると至難の業だった。
例えばスポンジ生地だが、白い色のスポンジなどめったに見ない。一般的なケーキのスポンジ生地を思い浮かべてほしい。濃淡の差はあれ黄みを帯びている。生地の材料には小麦粉とタマゴ、砂糖を用い、これをオーブンで焼くとどうしても黄色がかった色合いの生地になるからだ。
そして、それが通常のスポンジ生地であり、洋菓子のスポンジが黄みを帯びているのは常識ともいえる。むしろ、白色のスポンジ生地をつくることのほうが常軌を逸した挑戦といえよう。ただし、その挑戦がなければミルキーを彷彿させるロールケーキはつくれない。やるしかない戦いだった。
黄みを帯びない白色のスポンジ生地をどうつくり上げるか。スポンジは焼き加減1つで生地の色が変化しやすくなってしまう。かといって、色を気にするあまりに焼が足りないと生地のコシが弱くなり、そのままケーキに仕上げても変形しやすくなってしまう。
そんなデリケートな条件を前にして、材料の選別からその配合、さらに焼く条件として型、温度、時間など多くのパラメータを組み替えて最適な条件を探っていった。
そして半年間のトライを経てようやく白いスポンジ生地の開発に至ったのだが、その詳細なレシピは企業秘密として社外に一切明かされていないばかりか、社内でもごく一部にしか知らされていない。ことほどさように秘中の秘のレシピを開発したのだった。