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「ラクサス・テクノロジーズ」ブランドバッグのシェアで急成長

この記事の内容

  • シェアリングエコノミーが日本でも普及すると予測
  • 4度目の起業。口コミでサービスが普及
  • 起業には3つの要素、社会課題解決の意識も必要
起業のきっかけを語る児玉社長

世界的に広がるシェアリングエコノミー(共有経済)。インターネットを介してモノやサービスなどを他の人が利用できる仕組み。スマートフォン(スマホ)の普及により、日本でも自動車、オフィス、ファッションなどの分野でビジネスが増えている。民間調査会社によると、国内市場規模は2016年度の約503億円から、2021年度には倍増の1070億円と予測している。高級ブランドバッグのシェアリングサービスで急成長しているベンチャー企業が、ラクサス・テクノロジーズだ。児玉昇司代表取締役社長(41)に起業のきっかけや今後のビジョンなどを語ってもらった。

——ラクサス起業のきっかけを教えてください

「大学在学中の1996年に最初の会社をつくり、その後も1社を創業しました。事業内容はネットを利用した物流や通信販売関連ですが、ネット利用というビジネスモデルが当時としては早すぎたと思います。3社目としてネット広告代理業を始め、収益もあがりました。ここでは発送も手がけましたが、物流の外部委託は効率が悪いと感じていました。当時、米国で『買う』よりも『借りる』というシェアリングエコノミーが出始め、日本でも普及すると予測していました。そこで広告代理業の会社を売却し、その資金で2006年にラクサス(起業当時の社名は『エス』)を創業しました」

——当初からバッグのシェアサービスを考えていたのですか

「リーマン・ショックが起き、その間、通販事業で資金をためました。シェアリングサービスは当初、洋服で考えていたのですが、洋服だとシーズンやサイズ、色、好み、クリーニングの手間など変数が多すぎ、あまり利益が見込めないと分かり、ブランドバッグに変更し、15年2月に月額6800円で借り放題という『Laxus(ラクサス)』のサービスを始めました」

——ニーズはあると思っていましたか

「サービスを始める前に若い女性にアンケートしたところ、使うことに意味があり、借りるという需要があると確信でき、新品のブランドバッグ100個を買って始めました。広告もしなかったのですが、口コミもあって右肩上がりで広がり、現在ではスマホアプリのダウンロード数40万、メール会員20万人です。シェアリングサービスは黒字化までに6年かかるといわれていますが、当社は2年で黒字になりました」

——レンタルでは、壊れる、傷がつくなどのトラブルもあると思いますが

「そうしたケースも考えて月額料金を設定し、当社負担で修復します。経営はシンプルが大事で、当社のサービス料金は6800円の1つだけです」

——昨年1月には、使っていないバッグを有償でラクサスに預ける「ラクサスX」も始めました

「新しいサービスを開始してから、わずか半年で1万個以上のバッグ貸し出し希望をいただいております。これで現在、ブランド数は52種類、2万4000個のバッグを貸し出しています」

——今後の事業展開は

「高級ブランドを利用するのは30~40代の女性が中心ですが、一つランクを下げたサービスや女性用コートのシェアリングも検討しています」

——これまでの起業体験から、起業予備軍へのメッセージをお願いします

「起業するには(1)高いものを安く(2)時間を短縮する(3)複雑なものをシンプルに—という3つを考えることです。成功するには早く考え、早く行動して早く失敗し、そこからアウトプットを導き出すことです。金儲けだけでなく、社会課題を解決する気概も必要です」

——ラクサスの将来像は

「10年後には米国や英仏、アジアでもサービスを展開し、グローバル企業になることです」

企業データ

企業名
ラクサス・テクノロジーズ
Webサイト
設立
2006年8月(17年1月、現社名に変更)
従業員数
80人
代表者
児玉昇司氏
所在地
広島市中区中町8—18 広島クリスタルプラザ
Tel
082-236-3801
事業内容
バッグシェアリングサービス運営など