起業の意思を固めたのは2020年秋だった。「コロナ禍で学会などの行事がなくなり、じっくりと考える時間が持てた」という角谷氏は、長年にわたる研究の成果を世に出し、社会に役立てたいとの思いを強く抱くようになり、「社会実装のために自分たちが起業するぞ」と決意。折しも東北大学が大学の研究成果を活用した事業アイデアの検証を支援するビジネスインキュベーションプログラム(BIP)の募集を行っており、応募したところ、翌年に採択されて500万円の資金を得た。
そして2022年3月、アイラト(AiRato)を設立。社名はAiに放射線治療(Radiotherapy)と東北(tohoku)のそれぞれ最初の2文字を合わせたもの。東北大学発のがん放射線治療AIスタートアップが誕生した。起業前後には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援事業に相次いで採択され、合わせて3000万円を獲得。滑り出しは順調だった。
しかし、1年ほど経過すると資金調達が難航するように。この危機を救ったのは2023年10月に福岡市で開催されたスタートアップ対象のピッチイベント「StartupGo!Go!」だった。周囲からの勧めで出場したところ、見事に優勝。これを機にベンチャーキャピタル(VC)から出資の申し出があり、合計1億2000万円の調達につながった。スタートアップが直面する「資金調達の壁」を乗り越えた。