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「北澤企画事務所(東京都)」海外サイトは国内と別物

この記事の内容

  • 洋酒メーカー向け販促プロモーション事業を手がける中で、バーツール需要を見出す
  • 国内向けネットショップ開設。海外からの問い合わせが増え越境ECに乗り出す
  • 国内のコピーは通用しない。中小機構の補助金受け海外サイト立ち上げ軌道に乗る
「カクテルシェーカーだけで100種類以上。国内屈指の品ぞろえ」という丹羽氏(本社内にあるショールームで)

人口減少による国内消費市場の縮小期が到来する。購買者が減る国内から旺盛な消費意欲が期待できる東南アジアなど、海外に目を向ける必要性は高まる一方だ。とはいえ、中小企業・小規模事業者にとって実店舗を海外に設けることは容易ではない。そこで威力を発揮するのがEC(電子商取引)。新販路開拓の決め手となる越境ECで着実な成果を挙げている事業者の取り組みを通し、越境EC成功への秘訣を探る。

洋酒メーカーを中心にした販促プロモーションを手がけていた北澤企画事務所が、バーテンダー向けにシェーカーやメジャーカップ(酒用計量カップ)などバーツールの通販を始めたのが2013年。「洋食器専門店は多いが、高品質で豊富な品ぞろえのバーツール専門店は国内ではほとんど見当たらない。この現状から需要が期待できると考え通販サイトを立ち上げた」と丹羽克久マーケティング・ディレクターは説明する。

14年に本社を移転し、事務所と併設する実店舗で販売も行っている。ただ、ビル4階にショールームがあることは、外からは見えない。それでも訪れる外国人は少なくない。

販促プロモーションを企画、運営してきた経験から、バーツールやグラスなどのメーカーと取引があり、製品の目利き力も養ってきた。それだけに仕入れる国産商品はどこに出しても誇れる逸品ばかり。まずはショッピングサイトを立ち上げ、国内大手モールへの出店を開始した。

「海外からの注文や問い合わせが入ってくるようになり、これは驚きだった。米国や台湾などは日本製バーツールを高く評価しており、海外からサイトを探しに来る顧客が少なくないことが分かった。それならば、海外向けにも展開できると思い越境ECに挑戦することを決断した」と丹羽氏は語る。国内向けからわずか半年を経過したばかりの時期だったという。

国内向けは軌道に乗りつつあり、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)によるサイトへの認知度アップなど、一定のノウハウも蓄積できていた。この自負が海外需要を取り込む方針を後押ししたともいえる。「商品説明などを英語に翻訳してASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービスによる海外向けサイトを構築した」。これでうまくいくと考えたが、現実は違っていた。

国内向けサイトを単純にコピーしただけでは海外で通用しないことを痛感、新たに海外向けサイトを立ち上げる必要があった。だが「コストがネックだった」と丹羽氏は振り返る。中小機構が実施した越境ECマーケティング支援事業を知り、昨年6月末の第1期補助金申請に応募した。

これは、海外市場向けに構築するECサイトのコンテンツ作成、翻訳費用などの一部を補助する支援策。

この採択を得て海外で好まれるスタイルを重視した英文サイトを構築した。サイトの浸透も海外向けにSNSで案内広告を出す工夫で、徐々に注文が入り始める。「現在はEC売上全体の2、3割を海外が占めるようになった」という。国別では米国、台湾、香港からが多く、英国、フランス、東南アジア諸国など広がりを見せている。

それでもまだ課題は残る。SNSによる浸透だけでは限定的だからだ。需要は多くあるが、まだ十分に知られていない。「もっと幅広い層にアピールできる取り組みを検討している。低コストという制約はあるが、今後は多様な展開にチャレンジしたい」と丹羽氏は話す。

積極的なPRを通し〝待ち〟ではなく〝攻める〟越境ECを目指す方針だ。

企業データ

企業名
北澤企画事務所
Webサイト
設立
2008(平成20)年9月
従業員数
5人
代表者
松渕健二氏
所在地
東京都文京区後楽2-2-10
Tel
03-6801-5523
事業内容
酒類販売促進の企画・制作・運営、バーツールの企画・開発・販売、バー関連書籍の制作など