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「eコマースで拓く」ショップ成功の秘訣

高杉透・中小機構販路開拓支援チーフアドバイザー

消費者向けeコマース(電子商取引)市場は、右肩上がりの伸びが続いている。経済産業省が6月に発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2015年の消費者向け国内市場の規模は、13・8兆円(前年比7・6%増)と高い伸びを示した。中小企業、小規模事業者の新たな販路、起業家のツールとしてeコマース活用は広がりを見せる。どのように立ち上げ、成功に結び付けるのかについて最新動向を踏まえ、高杉透・中小機構販路開拓支援チーフアドバイザーに聞いた。

——eコマースの市場拡大をどのように見ていますか。 

「パソコン1台で場所も時間も関係なく、思い立った時にビジネス化できるスピード感や店舗が不要なローコストなどがeコマースの魅力といえるでしょう。消費者にとっても手軽に商品を買える利便性が市場を拡大させてきました。拡大傾向は今後も続くと思います。ただ、これまでうまくいっても、それが続くとは限りません。例えば配送料金が変更されたことで、同じやり方では物流コストが利益を消す懸念があります。消費者ニーズも一定ではなく変化していきます。見せ方、売り方などは、常に流れを敏感にキャッチしていく姿勢が大切です。市場拡大に安堵感を持たず、大手ショップにはできない、ひと手間を加える工夫などが成功の秘訣といえます」

——独自ドメインか、費用や制約を伴うが大手モールでの展開にするべきなのか。

「多様な展開があるので一概には言えません。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)や口コミなど自分で集客できるなら独自ドメインでもいいと思います。ただ、脆弱なシステムだとハッキングの危険もあるので、システム選びは慎重さが必要です。モールに出店する場合は、このような心配は少なくなります」

——集客手法に変化はありますか。

「ここ数年の傾向として、ネットショップなどのオンラインから実店舗のオフラインへと顧客を誘導するO2O(オンライン・トゥ・オフライン)を展開する店舗が増えています。スマートフォンの普及とSNS連携などが背景です。新たなシステムも開発され中小企業でも手軽に活用できます。実店舗で使える割引クーポンをネット上で発行するなど多様な手法があり、eコマースの新たな展開といえるでしょう。商店など販路開拓を目指す小規模事業者などに有効だと思います」

——eコマースを始めるには、どの程度のITスキルがあればいいのですか。

「普通にパソコンを操作できれば十分です。画像ソフト、HTMLなどの記述言語を扱えればより良いのですが、人には向き不向きがあるので、チャレンジして限界を感じるようなら、外注すればいいだけ。ネット上での商品の見せ方は、魅力を感じるサイトを真似ることから始めていい。ただしこの時に注意すべきことは、画像転用など著作権に触れていないかを確認すること。モラルに反することも厳禁です」

——越境ECの展望は。

「これから成長する市場であり、開拓余地が大きい。チャレンジするにはホームページの2カ国語対応は必須で、より海外比重を高めるのなら対象国のネイティブな人を採用するのが望ましいでしょう。海外展開で重要なのは情報です。中小機構は海外各国の市場調査を詳細に伝える「海外ビジネスナビ」をホームページに載せています。これらを参考に日本の商品をどんどん海外に売り込んでほしい」。

プロフィール

高杉透 (たかすぎ とおる)

1999年からネットショップに関わり、2003年インテリア家具の卸会社で月商9万円を1億円に伸ばし05年から2年連続で大手通販サイトのショップ・オブ・ザ・イヤー獲得。07年7月ECコンサルティングのECマインド設立。代表取締役に就任。14年から中小機構販路開拓支援アドバイザーを兼務。東京都出身。44歳。