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「丸之内マシーナリ(和歌山市)」目指せ!脱下請け

この記事の内容

  • 新しい測定装置を開発したが販路拡大に悩み、よろず支援拠点に相談
  • 補助金申請、HP作成、顕彰制度応募、展示会出展などアドバイスを受ける
  • 表彰受け認知度が向上。受託開発と自社開発の経営ビジョンが見え始める
開発した面取り測定装置の横で「機械の専門家集団として生きていく」と話す古川氏

「新しい測定装置を開発したが、販路開拓に悩み、よろず支援拠点に相談したところ当社にとって効果的な手法をアドバイスしていただき、すでに納入実績もできた」と丸之内マシーナリの古川雅祥代表取締役(58)は話す。

新しい装置とは、高速・高精度の「面取り測定装置」。面取りとは、破損などを防止するため、部品や材料の角や隅を斜めに削る加工法のこと。工業製品だけでなく、建材分野などでも行われる。ただ、高精度の工業製品の場合、面取りの形状を測定するにはこれまで「熟練作業者が高価な3次元測定装置を使い、時間をかけて行っていた」(古川氏)。

数々の測定装置や自動機械などを受託設計・開発・製造してきた古川氏は、「かねてから温めていたアイデア」として、2次元形状測定器を応用することにした。具体的には、同社独自の計測センサー位置決め機構と被検物を固定する治具の組み合わせにより、汎用の3次元測定装置以上のパフォーマンスを安価に実現することに成功した。この技術は特許出願中だ。

新開発の装置は「初心者でも扱え、瞬時に検査でき、データをパソコンに自動保存できるなどで検査コストを激減できる」。昨年9月から販売を始め、すでに欧州の航空機メーカー向けに部品を製造している企業へ2台納入。納入先からは「試用を始めてから不良がゼロになったと喜んでもらっている」という。

機械好きの古川氏は、自動車や機械メーカー勤務などを経て、1991年に独立。一人で機械の設計請負から始め、製造にも乗り出す。高精度の測定装置や検査装置、自動機械などの企画から設計、製作、保守まで顧客ニーズに合わせて一貫して行っている。大手電機メーカー向けの自動機械を共同開発するなど、その技術力には定評がある。

ただ、こうして開発した機械は〝一品料理〟で、いわば下請け。注文を受けて製造し、発注主に納入するだけで、守秘義務により他社には売れない。それに対し、開発した面取り測定装置はオリジナルのため、幅広く販売しても問題はない。

試作機はできたものの、古川氏は売り方に悩み、地元のわかやま産業振興財団を訪問。そこで同財団内にある和歌山県よろず支援拠点の支援を受ける。昨年2月のことだ。よろず支援拠点のコーディネーターは、補助金の申請やホームページづくり、顕彰制度への応募、展示会出展などさまざまなアドバイスを続けた。

その結果、ものづくり補助金を受けたほか、今年1月には経済産業省近畿経済産業局の「関西ものづくり新撰2016」の先端産業部門を受賞。2016年版ものづくり白書にも「経営革新を進め始めた製造企業」という項目の中で、成功事例として取り上げられるなど認知度も徐々に向上した。

さらに、従来からのオーダーメード事業と相乗効果を狙いながら新製品開発に取り組むことをテーマに経営革新計画を申請。3月に承認された。

よろず支援拠点への相談は現在も続けており、現在のテーマは「プレスリリースを活用した知名度向上」だ。相談を続けるうちに、古川氏は「次の経営ビジョンが見えてきた」と話す。具体的には、従来の受託開発と自社開発の2本柱で経営していく道筋だ。

自社開発については、すでに次のテーマに着手している。「次に開発する装置のニーズはまだ顕在化していないが、他に先駆けることで需要を喚起したい。大手企業にはできないイノベーションを創出し、それを若い技術者に残していきたい」としたうえで、「当社は売り上げより技術。いたずらに規模を求めず、企画や設計をメーンとして少数精鋭でやっていきたい」と、将来の方向性を見つめている。

和歌山県よろず支援拠点:矢埜幸男コーディネーターのコメント

古川代表取締役は、面取り測定装置の販路開拓をテーマに、わかやま産業振興財団を訪れました。その技術の高さから、近畿圏を中心に精密部品を製造する事業者をターゲットとし、当支援拠点と同財団の新事業支援コーディネーターが連携して提案・支援しています。

面取り測定装置はそれまでの〝一品物〟とは違い汎用性を持つため、マーケティングから始めることにしました。

具体的には、まずホームページ制作を提案したほか、国や県への補助金申請の支援、展示会の紹介、経営革新計画の申請などを助言しました。とくにウェブは引き合いを増やすために重要ですが、古川氏は技術者だけに自分でホームページを制作・更新しています。商品紹介の魅力的な動画も制作し、ウェブ展示会へも積極的に参加するなど活発に動いています。

企業データ

企業名
(有)丸之内マシーナリ
資本金
300万円
代表者
古川雅祥氏
所在地
和歌山市十三番丁51番地1
Tel
073-433-8670
事業内容
専用治具、測定装置、自動機の企画・開発・設計・製作・据付・保守