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「朝田商会(東京都千代田区)」地球環境前面に需要を開拓

この記事の内容

  • 廃油の海洋投棄禁止、1次オイルショックなどで廃油ろ過事業を開始
  • リサイクル不能な成分焼却などでノウハウ蓄積「ACE焼却炉」を商品化
  • 国内需要の縮小でアジアはじめ海外市場への展開をにらむ
「アジアでも需要は出てくる」と話す真田代表取締役

「これからはアジアでも、PCB(ポリ塩化ビフェニール)や医療関連などの廃棄物処理規制が厳しくなる。当社のACE焼却炉の需要は出てくる」—。こう強調するのは、朝田商会の真田一伸代表取締役だ。

この焼却炉は小型炉では不可能とされた1300度Cの連続燃焼にも耐え、可燃ごみだけでなく、生ごみ、汚泥などほとんどの廃棄物を完全燃焼できる。高温のため、ダイオキシン類やPCBなども分解。NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)などの有毒ガスも防ぎ、焼却灰も少ないなどの優れた特性を持つ。

石炭を手始めに、その後は重油など燃料販売などを業務とする同社が独自に焼却炉を開発したのは、廃油のリサイクルを手掛けたことがきっかけ。廃油の海洋投棄が禁止となったことや、第1次石油危機による原油価格高騰により、産業廃棄物処理業の認可も受け、エンジンオイルや工場などから出る廃油をろ過してリサイクルする事業を1969年から始めた。74年には関宿工場(千葉県野田市)に専用施設を新設して「リサイクルの走り」(真田氏)。となった。ろ過後の油は重油並みの性状を持ち、工場や銭湯向けなどに販売していた。

ただ、リサイクル不能な成分もあり、「それは自分で焼却した」。これに加え、ゴルフ場の芝焼却炉を製造したことや、原子力発電所のタンクメンテナンスの仕事を請け負ったことで「焼却炉内を高温にするノウハウが分かってきた」(同)。具体的には、高温化を促す溶剤や配管の仕組みなどだ。

これらノウハウを使い、3年間にわたる研究開発を経て、97年に「ACE焼却炉」を商品化、関宿工場に製造設備も整備した。処理能力毎時50kg、同100kgの2機種がある。これまでに食品工場向けなどに「約100台を販売した」実績を持つ。廃エンジンオイルや廃食用油も補助燃料として利用でき、高カロリー・水分50%以下の廃棄物なら着火時以外の燃料が不要など高い省エネ性もある。

それでも、「国や地方自治体の環境規制法令の強化により、中小型焼却炉の国内需要が縮小してきた」(同)。

そこで、これまで単発的に納入してきた海外市場に目を向ける。昨年には中小機構のF/S(事業可能性調査)支援を受け、ラオスの市場調査を行った。ラオスを選んだのは、シンガポールや台湾などには日本の焼却炉大手企業が入り込んでいるためだ。

結果として、ラオスでは廃棄物は焼却せずに最終処分している現状のため、すぐには需要が見込めない状況だが、真田氏は「必ず需要は出てくる」と確信する。現に、フィリピンやベトナムなどからは引き合いがきているという。

焼却炉の〝副産物〟として期待するビジネスもある。貝殻やサンゴを高温焼却して得られる焼成カルシウムは、健康維持に必要なミネラル分を豊富に含む。これを商品名「マグナキャプス」とし、すでに洗口液、化粧品、除菌剤などとして商品化した。貝の養殖が進み、貝殻処理の問題解決の一助ともなる。

 天然ミネラルの機能性肥料も商品化した。こちらは鶏ふん肥料を高温焼却したもので、殺菌効果が高くトマトなどの野菜で発生する青枯れ病対策にも有効で、「無農薬の有機栽培に最適」(同)という。すでに長野県の一部のJA(農協)で販売されている。これら事業を展開するため、一昨年には「朝田ケミカル」も設立。真田氏は「マグナキャプスや機能性肥料は海外からも引き合いがある。それがきっかけとなって、その原料をつくる焼却炉のビジネスに結び付けたい」という。

ACE焼却炉のキャッチフレーズは「地球環境がテーマです」。これを前面に出してアジアをはじめとした海外市場の開拓をにらんでいる。

企業データ

企業名
株式会社朝田商会
Webサイト
設立
1951(昭和26)年2月
資本金
7500万円
従業員数
約50人
代表者
真田一伸氏
所在地
東京都千代田区丸の内3-4-1(新国際ビル)
Tel
03-3213-9451
事業内容
石油製品・石油化学製品の輸入販売、産業廃棄物の収集・運搬・処理、焼却炉・温水ボイラーの製造販売など