中小企業の海外展開入門

「高橋商店」和の風味「柚子」を海外に普及すべくユニークな製品を展開

柚子を活用したユニークなスパイスが世界中でウケている。福岡県柳川市の食品メーカー、高橋商店が開発した「YUZUSCO(ゆずすこ)」だ。九州の名産「ゆずこしょう」を液状にした独特の製品であり、世界19カ国に輸出されている。

ゆずこしょうは、塩漬けした柚子の果皮に唐辛子を混ぜた薬味であり、早熟の果皮には青唐辛子、熟した果皮には赤唐辛子が用いられる。YUZUSCOは、そのゆずこしょうに酢を添加して液状化したものだ。香りの強い宮崎県東米良産柚子の皮を手作業で1つひとつ剥き、そこに厳選した青唐辛子と酢を合わせて仕上げる。

ゆずこしょうに酢を加えたユニークな製品「YUZUSCO(ゆずすこ)」

同社の高橋努武代表取締役社長がYUZUSCOを開発したのが2008年。そのキッカケはユーザーたちの一声だった。

「ゆずこしょうは溶けにくい、もっと使いやすい調味料にしてほしいという声が複数のお客さま方からありました。そこでペースト状のゆずこしょうを液状にすれば料理の素材にも絡みやすくなると考え、酢を加えた液状のゆずこしょうを考案しました」(高橋社長)

元来、同社の前身は江戸中期に始まる作り酒屋であり、明治後期に開発した酒粕を活用した漬物「有明漬」をもってして、1946年に酒造業を廃して粕漬物を主体とした食品メーカーへ転業した。法人化は1960年。現在は食品メーカーとして珍味、加工品、薬味・調味料(ゆずこしょうなど)を生産する。

初の海外展示会で高評価を得る

高橋社長は、YUZUSCOの開発当初から海外輸出を考えていた。大手食品メーカーで水産物の輸入業務に携わった経験から、日本のものは海外から高く評価されるという確信があった。

そこで2008年、福岡県で開催されてジェトロの商談会に出展すると、「思った以上に海外バイヤーからよい反応」(高橋社長)があった。特に香港やシンガポールなど東南アジアのバイヤーからの評価が高かった。

それ以降、2009年にパリ国際農業見本市「SIAL」とインド・ムンバイのジェトロのアンテナショップに参加。翌2010年はタイ・バンコクの食品見本市「タイフェックス」の出展など東南アジア各国およびフランス、スペイン、ブラジルなど世界各国の展示会に年間4~5回の頻度で出展した。

その結果、2010年にはジェトロの仲介でマレーシアに輸出を開始。また、独力で日本の商社を経由して2009年に米国のスーパーマーケットや飲食店に輸出を始めた。

出展するうえでのポイント

同社が展示会へ出展する際のポイントは、(1)現地の食材としてYUZUSCOに合うものを試食品として準備すること、(2)現地での購入ルートを用意しておくことだ。

(1)については、日本の「食」は世界中でプライオリティが高く、奥深いものと評価され注目されている。そこで出展先の国の人たちが柚子そのものを知らなくても、その国でよく食べる食材にYUZUSCOを合わせた試食品を提供することで、YUZUSCO自体に“和のテイスト”として興味と関心を集められる。

また、(2)についても、展示会で商談する際も現地での購入ルートがあるか否かでバイヤーの反応はまったく異なる。そのため同社では、展示会の開催される国で同社の製品が購入できるルートを準備してから出展に臨んでいる。

東南アジア、欧州、米国と世界中の展示会でYUZUSCOを売り込む

現地生産を始める

現在、YUZUSCOの輸出先は、香港、タイ、台湾などの東南アジア、フランス、スイス、ドイツなど欧州および米国、カナダ、ブラジル、UAE、豪州など19カ国に及ぶ。年間の販売数量は30~50万本であり、そのうち15%を輸出している。

「さらに、もっと多くのお客さまに柚子製品を堪能していただこうということでタイでは現地生産しています」(高橋社長)

2014年、タイの食品加工メーカーに委託して液状ゆずこしょうの生産を始めた。製品名は「ゆずふる」で、YUZUSCOこと製法はまったく同じだが、柚子以外の原料を現地で調達することで日本の小売価格の半分ちかい価格での提供を可能にした。というのも、日本から輸出すると関税などにより日本の小売価格の約50%増しになってしまう。多くの現地の消費者に日本の柚子製品を堪能してもらうためには、現地で買いやすい価格にしなければならない。そこで現地生産することでリーズナブルな価格での製品提供を可能にした。

さらに、タイ生産のゆずふるはフィリピン、オーストラリアへの輸出も始まっている。

さらなる柚子製品の海外展開を図る

同社は2016年、YUZUSCOだけでなく、柚子の皮や粉末、果汁などの柚子原料も輸出する「YUZU PREMIUM JAPAN」を展開していく。

YUZUSCOなど製品単体で輸出するよりも柚子そのものを原料として輸出すれば普及の幅も広げていける。

「柚子を原料として扱うことで工業用途へのボリュームを大きくしていけます。その工業用原料の輸出を柱としたうえでYUZUSCOなどの小売品を展開していきたいと思います」(高橋社長)

そのための第1歩として今後はアジアの市場を固めていく。工業用原料を核にした幅広い展開により、わさびや抹茶のように日本の"食"を堪能する原料として柚子を普及させていく。YUZUSCO普及に次ぐ高橋商店の海外戦略がいま動き出そうとしている。

企業データ

企業名
株式会社高橋商店
Webサイト
代表者
代表取締役社長 高橋 努武
所在地
福岡県柳川市三橋町垂見1897-1
事業内容
食品製造・販売