2026年 4月 20日
家電製品は買って所有するのが当たり前だった時代から、購入の前にお試し利用をしたり、一定期間だけ定額で使ったりするといったサブスクリプション型の利用形態が普及しはじめている。消費者の意識が大きく変化していることが背景にあるようだ。このサブスク型ビジネスのけん引役として急成長しているのが、レンティオ株式会社。消費者にとって使い勝手のよいサービスを提供するとともに、家電メーカーと連携して将来の商品開発にも貢献している。メーカーと消費者を結び付け、市場全体がウィン・ウィンとなるビジネスモデルを追求する。一連の取り組みが評価され、三輪謙二朗代表取締役社長は、中小機構主催の「第25回 Japan Venture Awards」(2025年12月)で中小企業庁長官賞を受賞した。
月間利用者15万人、製品ラインナップ7500種類のレンタルビジネス
レンティオの家電レンタルサービスは、毎月一定額を支払うことで使い続ける「月額制プラン」と、特定の数日間だけ利用できる「ワンタイムプラン」がある。使い終わったら送料無料で返却するだけで連絡は不要。また、商品が気に入れば購入することも可能だ。現在利用できるのは、ロボット掃除機、一眼カメラ、ドライヤー、空気清浄機、自動調理器など7500種類以上。利用者にとっては、高額な家電製品を、初期費用を抑えて利用できるほか、お試し利用して納得したら購入するといった使い方もできる。
「衝動買いで失敗をしたくない」「購入のために店舗を回るのが面倒」「運動会シーズンだけビデオカメラを使いたい」など、“コスパ・タイパ”を重視する若い世代の心も捉え、月間利用者は約15万人に拡大、累計貸出件数は169万件に達している。最近は、家電製品以外のファッション関連やベビーカー、楽器など、取り扱うアイテムも広げている。
友人の結婚式で借りた獅子頭からレンタル事業での起業を決意
創業者で同社代表取締役社長の三輪謙二朗氏は、大学卒業後に「楽天市場」を運営する楽天グループ株式会社に入社した。モバイル端末を利用した楽天市場の開発に取り組むなど、充実した日々を過ごしていたが、当時から「いずれは起業したい」と考えていた。どんな事業をやるべきかと考えていた時に、友人の結婚式の余興のために、獅子舞で使う獅子頭が必要になった。調べると、購入すれば3万円、レンタルすれば2万円という獅子頭があった。「1回のレンタルでこんな価格が付けられるのか。これはビジネスになるのでは」とレンタルビジネスの可能性に気づいた。三輪氏自身も当時子どもが生まれたばかりで、買ったものの、使わなかったものが家にたくさんあった。必要な時にだけ利用できるレンタルは事業になる、と考え起業を決意した。
まず、どんな商品がレンタルに適しているかのリサーチから始めた。ウェブサイトにカメラやロボット掃除機、ホームベーカリーなど、約100種類の製品のレンタルページを別々に作成し、反応を見ることにした。初めて注文が入ったのは、360度カメラだった。さらに、インスタントカメラや防水機能のあるアウトドア用カメラの注文も入った。カメラの中でもニッチな分野にレンタル需要があることが分かってきた。「自分で買うほどではないものの、海外旅行に行くなら、防水カメラを持っていきたい」。そんなユーザーの姿が容易に想定できた。三輪氏は「これこそ、弱者が強者に勝つランチェスター戦略で言うニッチトップ戦略だ」と確信した。実際、当時すでに一眼カメラのレンタルビジネスは他社が手掛けており、後発の同社が参入する余地は小さかった。そこで創業当初は、カメラのニッチ分野開拓にまい進した。
コロナ禍で消費者・家電メーカーの意識が変化
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コロナ禍でロボット掃除機や調理家電などにレンタル需要が急増 -

大きな転機となったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。外出が控えられるようになり、アウトドア向けカメラの注文はぱったりと少なくなった。一方で、ロボット掃除機や美容家電、調理家電の注文が相次ぐようになった。自宅でできることへの関心が高まる“巣ごもり需要”が創出されていたのだ。中でもロボット掃除機や調理家電は、普及が始まっていたものの、高額なため、レンタルでお試し利用するというニーズに合致していた。そのタイミングで三輪社長は、家電メーカーとの関係づくりにも動いた。レンタルビジネスを立ち上げた当初は、カメラや家電メーカーに連携を働きかけても全く相手にされなかった。それがコロナ禍でメーカー側の考えも変わった。家電量販店頼みの販売戦略では、客は店舗に来てくれない。ネット販売やレンタル市場の開拓を本気で考えるようになっていた。そんなタイミングだっただけに、同社の提案にも耳を傾けてくれるようになった。
レンタルビジネスで重要なのは、たくさんの品ぞろえを持つこと。ニッチな分野にこそ勝機があるが、消費者一人ひとりでニーズは異なる。ただ、野放図に在庫を増やせばリスクは高まるばかり。同社は家電メーカーと連携することで、リスクを軽減しながらより多くの商品を品ぞろえすることを目指した。メーカーから商品をできるだけ安く仕入れるほか、商品はメーカーの所有とし、同社のサイトで注文が入れば、レンタル収入を同社とメーカーが分け合うなど、さまざまな販売手法を生み出した。中でもメーカーが注目したのが、同社が提供するレンタルビジネスのプラットフォームだった。メーカーが自社サイトでレンタルサービスを提供するが、実際の配送や回収、課金管理などはレンティオが提供するというもの。三輪社長は「メーカーの中には、当社のサイトに商品を置かれたくないという意向を持つところもあった。しかし、メーカーが自社でレンタルビジネスを運営するのも大変。プラットフォームの提供は、メーカーにとっても助かるものだったようだ」と言う。大手家電メーカーが自社で提供するレンタルサイトの中にも、裏側には同社がプラットフォームを提供しているケースが登場している。
ユーザーの「買わなかったデータ」こそ、宝の山
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ユーザーからさまざまな要望を記した手紙が送られてくる -

家電メーカーとの関係が深まるとともに、新たなビジネスの種も生まれた。消費者の生の声を届ける仕組みだ。レンティオはレンタル会員に対して、使い勝手をアンケート調査している。そこから得られた声をもとに、ロボット掃除機や食器洗い乾燥機などの分野別に分析し、データとして提供する「レンティオサーベイ」という事業を始めた。消費者は商品購入を検討する時に、どういうことを気にしているのか、実際に使ってみたうえで使い勝手をどう考えているのか。SNSなどで上がっている口コミ情報以上に具体的で詳細なデータが提供される。その中でも家電メーカーにとって最も欲しいのが、「なぜその商品を買わなかったのか」という情報だ。今までは、それを知る手段がなかった。レンタルしたものの、継続利用や購入につながらなかった商品は、どこに課題があったのかを知ることができれば今後の商品開発を進めるうえで大きな参考となる。実際、ある大手家電メーカーがレンティオサーベイを活用して調理家電製品の開発に役立てているなど、これまでに30社以上が活用しているという。
レンティオにとってもレンティオサーベイは、レンタル製品を提供してもらうメーカーとの関係強化に役立っている。
同社の本社玄関には、顧客から届いた手紙がたくさん掲示されている。手紙の中には、「この商品のここを、こう改良してほしい」といった具体的な要望がびっしりと書き込まれたものもある。こうした生の情報を集めることができるのも、顧客と長い期間つながることでできるレンタルビジネスならではのものだ。
推し活向けビジネスを開拓

アウトドア用カメラからスタートし、家電製品のレンタル事業で成長した同社だが、現在はさらに取り扱う商品分野を拡大させている。七五三用の着物やスーツケース、ベビーカー、健康器具、シャワーヘッドなど、商品ラインナップは7500種類まで広がった。レンタルやサブスク型の利用が消費者に定着しつつあると言えるだろう。三輪社長は「昔は所有することが格好いいと思われていたが、消費者の意識が変化している。逆に買ってしまったら変えられないという『小売りの呪縛』を感じる人もいる。レンタルなら返せばいい、という気楽さを感じてもらっている」と説明する。
消費者との新たな接点づくりとして、ロッカータイプのレンタルサービスも始めた。同社のレンタル商品の中で隠れたヒット商品に防振双眼鏡がある。コンサート会場で「推し」の歌に合わせて体を動かしても、手振れ防止機能で高倍率で対象を見ることができるというもの。防振双眼鏡は購入すれば7万~10万円するが、1日だけのレンタルなら数千円で使える。これまでのレンタルは、自宅に届けてそれをコンサート会場に持っていき、そのあとに返送するため、どうしても数日がかかっていた。それを、コンサート会場近くのロッカーから取り出し、コンサート終了後にロッカーに返却することで、1日だけのレンタル料で済む。ユーザーにとっては安く使え、同社も短期間で回収することで、回転率を高めることができる。双方にとってウィン・ウィンの仕組みだ。
サーキュラーエコノミー社会への転換をリードする存在に

三輪社長は「第25回 Japan Venture Awards」で中小企業庁長官賞を受賞した。レンタルビジネスで新しい市場を開拓したことが高く評価された。「これまで賞に応募することはなかったが、創業10周年を迎えた年なので、何か新しいことをやりたいと思った」と応募の動機を語る。
再資源化事業等高度化法や資源有効利用促進法の改正により、メーカーには、製品の長寿命化や再利用、リサイクル素材の利用促進が義務付けられることになった。製品は一度使って廃棄するのではなく、できるだけ長期間利用できるように修理をしやすい設計をあらかじめ考えたり、使用済み製品から部品や部材を再生して、再利用したりするといった使い方が求められるようになる。また、販売店も使用済み製品の回収や消費者への回収の呼びかけに協力が求められる。これまでの売りっぱなしの製造・販売スタイルから、回収までを考えたビジネスを考えなければならない。

レンタルビジネスを通じて回収ルートを持っている同社には大きなビジネスチャンスが到来する転換点となるはずだ。三輪社長は「現状では、当社には部品交換やメンテナンスへの対応ができる機能はあるが、修理には対応できていない。今後、他社と連携することで、修理にも対応する体制を整えていきたい」と将来構想を描いている。
大量生産・大量廃棄時代から、限られた資源を有効活用してサステナブルな社会づくりをする、循環経済(サーキュラー・エコノミー)型のビジネスモデルの構築が求められている。三輪社長は「当社は『新しい消費行動をつくる』というミッションを掲げて創業した。循環経済への移行が進む中で、当社は大きな役割を果たしたいと考えている。レンタル利用はこの数年で市場規模は拡大したが、まだまだ価値の浸透はできていない。消費者が家電やさまざまな商品を使いたいときに当社の名前が浮かぶようになるまでに知名度を上げ、レンタル市場を大きく拡大させていきたい」と語る。物価高騰が生活に大きくのしかかっている時代に、同社が目指すビジネスは消費者の多様なニーズを満たす役割を果たせる。大きな成長を期待したい。
企業データ
- 企業名
- レンティオ株式会社
- Webサイト
- 設立
- 2015年4月
- 資本金
- 5000万円
- 従業員数
- 147名
- 代表者
- 三輪謙二朗 氏
- 所在地
- 東京都品川区東品川三丁目31番8号 東品川ビルディング
- 事業内容
- 家電のレンタルサービス「レンティオ」の運営、 その他メディアサイトの運営など



