2011年2月、ハウス食品から発売された「のっけてジュレ」は、ゼリータイプのポン酢という新たな市場を確立した。とりわけ若年層をとらえ、発売後1年間の売上高が10億円を突破しそうな勢いで推移している。
のっけてジュレは発売当初の和テイスト=ポン酢で市場を固め、2012年2月にはバジルなど洋風の新商品を加えてシリーズ化を進めている。いままさにゼリータイプ調味料という新しい商品カテゴリーが形成されつつある。
ポン酢の長所と短所
かつてハウス食品では、一般商品のドレッシングと業務用商品の調味料という販売領域の異なる2つの商品がそれぞれに問題点を抱えて苦悩していた。そして、2つの苦悩を同時に解決する糸口の先に新たなヒット商品が待っていた。それが「のっけてジュレ」だった。
まず、話は17年前にさかのぼる。その年(1995年)、ハウス食品は「冷しゃぶドレッシング」を発売した。冷しゃぶというメニューがまだ一般化されていない時代だったことから、しばらくは一世を風靡する話題の商品となった。
ところがその栄華は長く続かなかった。2002年ころから売上げが急減し、なんとピーク時の半分くらいにまで後退してしまった。一般商品である「冷しゃぶドレッシング」の苦悩が始まった。
その後退要因を調べてみると、冷しゃぶ自体は夏場の家庭料理として世間で一般化したものの、その調味料の主役をいつの間にかポン酢に奪われてしまっていたのだ。専用のドレッシングでなくても、台所に常備されているポン酢で気軽においしく食べられる。そう消費者の意識が変化していたのだ。
元来、ポン酢は鍋料理を始めとした和食メニューに対して汎用性があり、しょう油がベースでさっぱり感があるため高齢者世帯からの支持も大きい。そんな特性が冷しゃぶでの需要を伸ばした。
また、一方で冷しゃぶに用いるポン酢にも消費者の不満はあった。同社の調査によれば、サラダ野菜にうまくからまず食べ応えがない、あるいは液体が野菜にからまないまま器の底にたまってしまう、といった不満が内在していた。
業務用調味料も悩んでいた
同社の開発チームは、まずポン酢の良さに着目した。香辛食品事業部開発マネジャーの中谷清喜さんは語る。
「それまでは冷しゃぶドレッシングの専用調味料としての優れた特徴をアピールし、ポン酢市場を奪取していこうと考えていましたが、お客さまのニーズはそうではなかったのです。まったくの見当違いで、そんなことでは市場を勝ち取るなんて不可能でした。同時に冷しゃぶに対するポン酢への不満点も探りました。こうしてわれわれは、ポン酢の良さを残しつつ、その不満を解決し得る方法はないかと考え、新たな開発に取り組んだのです」
「冷しゃぶドレッシング」の一方で苦悩を抱えていたもう1つの商品が業務用のゼリータイプ調味料だった。「ねぎ生姜」「ゆず胡椒」「おろし唐辛子」といったゼリー状の調味料をレストランやホテル向けに販売していたが、売上げは横ばいだった。また、アイデアを活かしてこれを家庭向けの一般商品として売れないかという案も経営陣から降りてきていた。
「実際に一般商品として店頭に並べたこともあるのですが、パッケージが業務用のままのため、そこからはどんな商品なのかがお客さまに伝わりませんでした。食べればおいしいことがすぐに納得していただけるのですが、パッケージで商品の特性を訴求できていなかったので、お客さまにはわかりにくかったと思います。食に関してお客さまは保守的なものですから、安心できない商品は買っていただけません。どんな味なのかがパッケージからイメージできない商品ではお客さまも手を出しにくかったと思います」
ところが、中谷さんたちはその失敗からあることを思いついた。つまり、業務用のゼリータイプ調味料にはポン酢がない。が、ポン酢は汎用的な調味料で人気が高い。その一方で液体ゆえに野菜にからみにくく、冷しゃぶではそれが消費者の不満になっている。ならば、ゼリータイプの調味料としてポン酢をつくってみればいいのではないか。一般商品のドレッシング、業務用商品のゼリータイプ調味料それぞれの苦悩(売上の伸び悩み)が同時に解決できる。そんな発想からゼリータイプのポン酢という新商品が生まれたのだ。
「のっけてジュレぽん酢」をカルパッチョ(左)やトンカツにのせて食べる。ゼリータイプ調味料という新しいカテゴリーの市場が形成されつつある