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「エコモット(札幌市)」IoTで北海道経済に貢献

この記事の内容

  • エコモットはIoT技術で北海道の経済発展と社会貢献に尽力しているベンチャー企業
  • 50年後に開拓史200年を迎える北海道のあるべき姿を構想
  • IoTソリューションで構想とロマンの実現を目指す
「IoTで北海道経済を活性化する」と入澤社長

エコモット(札幌市中央区)は、IoT(モノのインターネット)ソリューションで、人が安心して暮らしてける社会の実現に尽力しているベンチャー企業。中小機構の窓口相談、中小企業大学校、ジェグテックの利用企業であり、同機構が出資したファンドの投資を受けて札幌証券取引所の道産中小企業育成市場「アンビシャス」にも上場した。入澤拓也代表取締役は、北海道の経済発展と社会に貢献するため、開拓の歴史が200年を迎える約50年後を見据えた大きなビジョンを描いていた。

北海道では「食」「観光」「教育」が強化ポイントだと語る。ワインや焼酎など農産物からつくる加工品に付加価値をつけて売り上げを伸ばし、VR(仮想現実)技術を駆使して季節を問わず旬の映像を演出しインバウンドを増やす。教育分野では研究機関を招致して、優秀な人材を呼び込むなどビジョンは多岐にわたる。

「北海道の歴史が札幌農学校に始まっている。外国から講師を招き、農業で北海道を開拓してきた。外部の血を再び入れるなどして、新たな産業を興す知恵を生み出したい」と語る入澤氏からは、地元経済建て直しへの熱意が伝わる。

27歳で起業し、37歳になった今年6月に上場した。起業と成長には時流を読み解く力が求められるという。

「京都議定書を機に環境意識が高まり、地球温暖化対策をテーマとする北海道洞爺湖サミットがあった。創業したのはIoTがユビキタスと呼ばれていた、そのころ。ほどなくリーマンショックの影響で灯油価格が上がり、既設のロードヒーティングが使えないケースが急増した。降雪センサーの適正制御によって経費削減効果が生まれる当社のIoTロードヒーティングシステム『ゆりもっと』の需要に火が付いた」

会社の成長過程では、経営や上場に関する悩みを相談できる先輩に恵まれたと振り返る。「当初手元には資本金10万円とパソコン1台しかなかったが、先輩のアドバイスに救われた。悩んで失敗するより、経験者に聞いて参考にすべきだ。しなくていい苦労なら、する必要はない」。今度は自分が得たノウハウをこれからの人に伝えていきたいと、次代の支援も忘れない。

入澤氏は「会社を社会の公器にする」と公言している。その心を聞いてみた。

「『ゆりもっと』を駐車場に採用してくれたマンションの理事長に『私は、入澤さんのシステムを導入したこのマンションに一生住むと思う。だから、入澤さんとは一生の付き合いになる』と言ってくれたことに感銘を受け、会社を入澤拓也株式会社にしてはいけないと強く思った。顧客が一生使ってくれる製品を提供する会社の透明性、信頼性、持続性は高くなければならない。エコモットを社会の公器にするのは、私の責務だ」

入澤氏は、IoTが社会のインフラになると予見する一方、注目を集めているAI(人工知能)は人材不足を補う技術であるべきと考えている。「AIが回答するためにはIoTによるデータ収集が必要だし、手足を動かす仕組みがなければ人手不足は解消しない。運転手不足を補う自動運転も、速度や位置情報を集中管理するIoTのフレームで稼働する」

経営には社会貢献と事業を両立する思考とともに、ロマンとビジョンが欠かせないと強調する。「社長の夢と実現プランに社員は共感して付いてくる。私は学生時代を過ごした米国シアトル市に支社を設立する。時差を利用した24時間稼働に好都合な同地から、様々なIoTソリューションを遠隔管理するなど現実的なロマンを追いかけたい」

やがては札幌発パリ行きの鉄道を実現したいと熱く語る入澤氏に、道内経済再浮揚の期待がかかる。

企業データ

企業名
エコモット
Webサイト
設立
2007年2月
従業員数
70人
代表者
入澤拓也氏
所在地
北海道札幌市中央区北1条東2-5-2(札幌泉第1ビル1階)
事業内容
IoTインテグレーション事業

プロフィール

入澤拓也 (いりさわ たくや)

米ワシントン州HighlineCommunityCollege卒
小樽商科大学大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻修了
2002年 クリプトン・フューチャー・メディア入社
     携帯電話のコンテンツの企画・開発に従事
2007年2月 エコモット設立 代表取締役に就任
2017年6月 札幌証券取引所アンビシャス市場に上場