さすがにこのままではまずい。山田社長は危機感を募らせます。社長は以前から卸会社主催の「売り方勉強会」に参加してしていました。この勉強会に、スタッフも参加させることを決めます。八丈島から勉強会に参加させるには、旅費と受講料とかなりの出費になります。何かが変わるはずだ、とこらえてスタッフを勉強会に送り出し続けます。
結論から言いますと、その勉強会に参加してスタッフは変わります。自分達から予約を積極的に取るようになります。彼らを変えたのは何か、それは同じようにヌーボーの販売に苦しむ他社の同世代スタッフ達の存在でした。その勉強会には、山田屋以外に4,5社の小売店のスタッフも参加していました。彼らは、すぐに自分達が同じ苦しみを抱いている同士であることに気がつきます。「君もか」「そうなんですよ、ヌーボーの季節が憂鬱なんです」意気投合する仲間に出会えたことで、山田屋のスタッフも心を開きます。
勉強会は、参加者達が実践しているお客さまへの「商品の伝え方」の内容と、その成果を報告し合うことを中心に進められます。一緒に苦しんでいる他社の同士達が「こんなPOPを作ってみました。」「こんな店頭陳列をしてみました。」と楽しそうに自分達の工夫を発表します。苦しいはずなのに楽しそう。いや、苦しいからこそ楽しいのか、そのことに山田屋のスタッフも気付きます。誰よりも、気付きを得たのは山田社長本人でした。自分に足りなかったのは、これだったのだ、情報の共有化だけではなくて、心の共有化。「おまえも辛いか、俺もだよ、じゃあ頑張るよ」という心の共有化できないうちに、スタッフに売ることばかりを求めていた、そのことを痛感します。